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バラエティ番組で、動物の口の動きに合わせてマイクで人間がしゃべり、何も知らないターゲットを騙しているシーンを見たことがある。
まさに自分は今、その渦中にいるのではないだろうか。
「私、騙されませんよ。ドッキリの番組ですよね」
「は?」
「どこかに隠しカメラとマイクがあって、私の反応を見て笑ってるんでしょ」
「はあ? 素直じゃないわね。でも、少しくらいすれてたほうが正宗にはちょうどいいわ。よく見ると顔も地味だし」
朱美は文鳥の毒舌の前に絶句した。
文鳥はそれからソファに向かって飛びたつ。
「ちょっと来て」
朱美の耳元を飛び去るときサチコはそう言った。
もし、マイクがあって、誰かが文鳥の動きに合わせてしゃべっていたとしたら、この臨場感はどうやって演出しているのだろう。
サチコが一番近くに来たとき、一番大きくはっきりと声が聞き取れたのはなぜだ。
操り人形のように文鳥の言う通りソファに腰かけた朱美。
「鳥かごは……」
「あんなの捨ててやったわよ。ったく、文鳥をなんだと思ってんのよ、あんな狭いとこに閉じ込めてさ。発狂するわ。ブランコがあるからいいだろ? って? じゃあアンタは一日中ブランコにブラブラ乗ってられるわけ? できるもんなら変わってやるわよ!」
テレビの上にとまった文鳥から発される中年女性の声は、間違いなくその小さな口から出ている。
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