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「ただいま」
正宗の声がした。
「堺さん、本当にごめんね。あれ? お母さん?」
正宗は部屋中を探し回り、困った顔の朱美と目を合わせる。
「もしかして……」
「あの、一時間後に戻るとおっしゃってました」
正宗はがっくりとうなだれた。
「どうぞ、とりあえずそこに座って楽にしてください」
正宗に言われるがまま、ソファに腰かける。
「お腹、減ってます?」
「あの、どうぞお構いなく」
「僕もこれから晩飯なんで全然気にしないでください。パスタでいいですか?」
「す、すみません」
朱美は頭を下げた。
ニンニクを炒めるいい香りが漂うと、お腹が鳴った。
恥ずかしくて下を向いていると、正宗がこちらに来る気配がした。
「あの、もし違ったら本当に申し訳ないから忘れてほしいんですけど、堺さん。僕の事好きですよね?」
朱美は顔を真っ赤にしてうつむき、そのまま顔を上げられなかった。
どう答えろというのだ。好きだと言ったところであの白文鳥が言ったように結婚などできるわけもないし。
「じゃあ、僕から言います。僕は、堺さんの事が好きです」
驚きすぎて血流が加速した……そしてその結果、先ほどとは比べ物にならないほど大きな腹の音が響く。
「ふ、ふ、ふははははははは」
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