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 西棟のレストラン階では、ヘリコプターの順番待ちをしていた富裕層の観光客と、東棟から逃げてきた観光客が一触即発の状態になっていた。 「お前らは俺たちを通路に閉じ込めて見殺しにするつもりだったんだろ!」東棟にいた人々はしつこいくらいに同じセリフを浴びせていた。 「そ、そんな事無いです。開けるつもりでした」西棟の逃げ遅れた人たちは周囲を囲まれ失禁したような表情になっている。 「人として終わってるだろ!」 「信じて下さい」 「あんたたちはどっちもクズだろ。俺たちが東棟に上がれないようにエレベーターのドアを椅子で止めていたのは誰だっけ?」金田は東棟の人々に向かって吐き捨てた。  静まり返っていた。反論する者はいない。彼らからすると金田はドアを開けてくれた救世主である。
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