九年

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 間違い無い、色白、高い鼻は旧帝国領出身の人に見られる特徴だ。  あの威張り腐った様子と、でっぷり肥えた腹から、きっと旧帝国貴族だろうと当たりを付ける。  帝国貴族――――――王国には、法で定められた”貴族”は存在しない。  しかし、かつての帝国では、人は皇族、貴族、平民の三つに分けられていたと聞いたことがある。  実際に見た訳では無いけれど、たいそう横暴で酷い連中だった、らしい。  敵国の主観なんで実際の所は分からないけれど。  ただ、アレを見る限りそんなに間違ってはいないのかもしれない。  かかわり合いになりたくないのでサッサとその場を離れる。  いずれ憲兵でもやって来るよ。  「………あれ、チューリちゃん、どうしたの?」  突然の聞き覚えのある声、ただ、ここで聞くのはちょっと珍しい声。  「それはこっちの台詞ですよ…………ハロさん。」  王国軍の誇る優秀な戦士、ハロ・マグナさん。  恐ろしいことに九年前から全く見た目の変化が無い妙齢(?)の美人である。  「私はクレハを探しに来たんだ。今日の宴会は彼女も出席予定だからね。」  そう、この人実は城に招かれるほどの良家の出なのである。  しかし、何でクレハさんが…………?
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