九年

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 「チューリちゃん、クレハ見て無い?   今日は非番だから買い出しに行くって言ってたんだけど。」  「………いえ、ごめんなさい、見て無いです。   ……………でも、あそこにいますよ。」  「えっ?」  私が指さし、ハロさんが振り向いて目視した先、さっきまで帝国貴族が一方的にキレていた場所。  そこに、太った中年男性を締め上げる真っ赤な髪の女性がいた。  「あのバカ…………。」  額に手を当てたハロさんが、重い足取りで混沌の真っただ中へ歩いていった。  数分後、呵々大笑するクレハさんとため息を吐くハロさんが帰ってきた。  クレハさんは目元に皺がでてきてちょっと歳をとった様に見えるけど、むしろいわゆる大人の色気は増してる気もする。  やってることは色気と程遠いんだけどね。  「おう、チューリ!!お前もいたのか。」  前はちびっこ呼ばわりされてたけど、今は名前で呼ばれてる。  曰く、戦士をちびっこなんて言っちゃいかんだろ、だって。  そう言いきってしまうのがやっぱりカッコいい。  「いいから、帰るよクレハ。   チューリちゃんも、そろそろ戻った方が良いんじゃない?」  返事する前にハロさんがそう言った。  確かに、太陽も結構沈んでるね。  また後でねー、と手を振って去って行ったハロさん達を見送ってから、ウルが喋れることを思い出したように問うた。  {行くのか?}  行くよ、おじさんに迷惑はかけられない。  {人間とは何とも………。}  もう何度目かも分からない呟きを聞きながら、私も帰路に就いた。
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