九年

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 「………ふぅっ………。」  森を出た所で詰めていた息を吐きだす。  いつもの事だが、緊張しなくなる日は未だ来ない。  ………いや、来なくていい。  {……のう、チューリよ。今日は引き上げるのが早うないか?   いつも日暮前まで”食事”をするのに、まだ昼過ぎじゃぞ?}  狩りの短さに同居人から不満そうな声が上がるが、理由がある。  「大物を喰ったんだから我慢しなよ。   ………今日はおじさんから呼び出されてるから。」  口に出す必要は無いが、周りに誰もいないとつい喋ってしまう。  出来れば改めたいんだけどな。  {ドラニアムからか…………なら、仕方ないのう。}  そう、仕方ないんだよ。  おじさんには色々と融通きかせて貰ってるんだしね。  例えば、一人で森に”食事”に出ることとか、ね。  {分かっておるわ………全く、人間社会とは度し難いほどに複雑な機構じゃのう。}  そうだね。でも、ウルも慣れてきたんじゃない?  {戯けが。妾にとっては、いつまで経っても過ごし難い世界よ。}  そう………まぁ、そうだろうね。  森の中では感じなかった強い日光が目を灼く。  今日はいい天気だ。
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