九年

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 おじさんの書斎の戸を叩く。  おじさん、今日は珍しく家に帰って来てるから。  「入っていいぞ。」  許可が出たから戸を開ける。  ……余計なこと言わないでよ、ウル。  {分かっておる、安心せい。}  おじさんは机で書き物をしていたみたい。  書類に囲まれて、前線に出ることは無くなったけど、それでも顔の皺は昔よりずっと深い。  それが歳のせいだけで無い事はよく分かっている。   なんて切り出せばいいのか分からない。  黙って向かい合ってたら、おじさんが口を開いた。  「チューリ、今日の宴だが…………。」  「うん、分かってる。ちゃんと出席するよ。」  私がそう言うとおじさんはほっと息を吐いた。  ただでさえ忙しいのに、これ以上心労をかけちゃいけない。  ………私が行きたくない理由そのものが心労になってるのかもしれないけど。  「…………すまんな、チューリ。」  「……何が?」  「………………いや、何でも無い。」  おじさんに謝られるようなことは何もない。  むしろ感謝しないといけない程だ。  一人で勝手に幻獣と戦うこともについても色々と根回ししてくれているし、そもそも私みたいな孤児を拾って育ててくれたことにも。  ………おじさんも疲れてるのかもしれないな。
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