九年

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 夕方には着替えて出かけなければいけないが、まだちょっと早い。  なのでちょっと街を歩いてみることにした。  {暇なら戦えば良かったのじゃ。}  悪かったよ、ウル。  街には昔に比べて活気があるように見える。  最上級なんて化け物の危機はウルを最後に訪れてないし、皆この現状に慣れているのかもしれない。  ……望ましいとは言えない。  ただ、力の無い者に緊張を強いるのもまた酷な話である。  明るいのもそれはそれでいい傾向だし…………。  {其方、また難しく考えておるなぁ。   自分にとっての良し悪しを決めれば済む話じゃろうに。}  …………ならウルはどうなの?  {妾か?分かっておるじゃろうに妙なことを聞くの。   そんなの、どうでもよい、に決まっておるわ。   ヒト種がどうなろうと、妾の知ったことでは無い。}  そう………まぁ、ウルだもんね。  {おい、何じゃその言い方。}  ふと、ある一角が騒がしいことに気付いた。  目だけ強化して、人ごみの隙間を覗く。  中心にいたのは二人の人間。  一人は周りとそんなに変わらない目鼻立ちの若い男。  もう一人は周りより鼻が高く、色が白い太った中年。  あれは…………  「…………帝国人?」
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