彼女の場合

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彼女の場合

私はグラスが空になったことに気づき、 「チェイサーと同じものを一つ。」 と追加の注文をした。 静かな時間の流れの中ふっと隣の彼に聞いてみたくなった。 「ねえ。どちらを選ぶ。」 「眼鏡があるの。かけると目の前の人の過去が覗ける眼鏡と、  未来が覗ける眼鏡。どちらをかける。」 まただ、きっとまだ望みはあると小さな希望を抱いている自分に笑えてきた。 可笑しくもないの来るこみ上げる失笑の気持ちを追加のグラスにて押し戻した。 頭の中にはもう、あの声が木魂していた。 耳の奥に聞こえている声と耳に入ってく声の違いにすっと現実に戻された。 「・・・過去の覗ける眼鏡が・・・・」 過去か。。。その後の言葉は耳に入ってこなかった。 耳の奥に聞こえている声が徐々に頭の中を占めていた。 「過去なんて見るもんじゃない。今君がいる。  眼鏡を覗いて君の隣に僕が居なかったとき、僕は今、未来を変える方法を考えるよ。  そして再び眼鏡をかけてフレームの中の  君をみて、君の未来に僕が必要なことを確信するね。大丈夫、未来は変えられる。」 二重奏になっていた声が消え再び 静かな天使の時間になっていた。 誰に返すでもない、 「そう。。。」と相槌をうち、この店に来たことを後悔した。浸りに来るのなら、 一人でくるのだったことを。 抜け出せそうもないな、今夜も。侘しさを感じた 次の瞬間、店を出るきっかけを探し始めていた。
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