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でも、荷物を積みながらも、社長の“秘密”“危うい”って言葉がずっと頭を巡る。
“危うげ”って……どんな風に?
葵央は今『幸せ』だって言っていたのに?
“秘密”って、あの“リナ”さんと関係してるんだろうか?
「……っ、うわっ!」
いろいろ考えて、仕事に集中できていなかった私は、荷物を積むために、踏み台の上で背伸びをしていた足をふらつかせてしまった。
そのまま体が後ろ向きに倒れていく。
マズい!荷物を落とす!
しりもち不可避……ってか、まだきちんと積みきれていないあの重い荷物が私の頭の上にふってくるよ!
大惨事を予測して、思わずギュッと目をつぶる。
「おい!」
「え……あれ?」
ふってこな…………い?
頭に衝撃も感じないし、お尻も痛くない。
代わりに、背中を誰かに支えてもらっている感覚。
慌てて目を開けると私を見下ろしている目と目が合った。
「あ、葵央……なんで?」
片手で私を支え、もう片方の手で落ちかけてきていた段ボールを支えてくれていたのは葵央だった。
「全然、積み込み終わってる様子ないから、見に来たら落ちかけてるし」
そう言いながら、ダンボールを片手で押し込んだ後、私をきちんと立たせてくれる。
「ご、ごめんね、ありがとう」
昨日あんな風に言われたから、葵央には迷惑かけたくなかったのに、早速やってしまった。
ヘマをしてしまった自分を反省しつつも、気にかけて来てくれたことが嬉しかった。
今日はもう、っていうか、もうずっと私と話してくれないかもって思っていたから。
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