あと30回

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「別れよっか、俺達」 近々その言葉を言われる。 そんな予感はしていた。 だから今さら驚きもしないし、ましてや悲しんだりもしないよ。 微妙な距離を取り、私の前に立つのは、今この瞬間まで彼氏だった男、葵央(あお)。 「……うん、わかった」 私はその目をしっかりと見つめて、抑揚のない声でそう答えてみせた。 次の瞬間に風が吹いて、私と葵央の間を通りぬけていく。 まるで、風が2人の関係を断ち切ったかのように思えた。 高校2年生になった私達。 私も葵央もあの頃よりも随分と大人になってしまったね。 私の髪は長くなって、背だって数センチは伸びた。 葵央もあの頃の何もセットしていない髪型とは違う。背に至っては一体何センチ伸びたんだろう。 手の大きさだって、肩幅だって、声の低さだって、あの頃とはもう別人かっていうくらいに違うよね。 でも、一番変わったのは私達の間に流れる空気かも。 付き合ってからもう3年が過ぎたんだね。
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