あと25回

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先輩は私と葵央が別れようとしていることは知らない。 「桜本さんはそんないい加減な奴がいいの?」 「……」 何も答えない私の顔を先輩が覗き込んでくる。 目と目が合って動揺した。 「桜本さんみたないい子には、彼は合わないと思うんだ」 「……」 「だからさ、僕のこと考えてくれなかな?」 「え」 「気付いてない?僕ずっと桜本さんのことが好きだよ。僕なら、君にそんな悲しい顔させないし、全力で大切にする」 先輩の頬が赤い。 先輩が私のことを好き? 耳に届いた信じられない言葉に驚いて視線が泳いでしまう。 「あ、あの……私は……」 「今はまだ答えは聞きたくないかな。だって真面目な桜本さんは“彼氏がいる”って断るでしょ」 私の言葉を遮るように、先輩が私の手を握った。 「桜本さんは今まで僕のこと“テニス部の先輩”としか見てなかったでしょ?これからは“自分のことを想っている男”として見てみて欲しいんだ」 「……」 「そしていつか、僕のこと好きになってよ」 「……えっ」 「そんな希望を込めて今日告白したんだ」 そんな言葉とやわらかい笑顔を残して、先輩はコートに戻っていった。
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