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何を言い出すのよ急に。
赤いはずの顔をごまかすように、私は慌てて口を開いた。
「きゅ、急に何?そういうの、付き合ってる時には言ったことないくせに」
「あの頃は自分の気持ちを素直に表現するのが恥ずかしかったんだ。ガキだったから」
「……」
「でも今は“可愛い”とか“好き”とか、もっともっと素直に言っとけばよかったって、後悔してる」
コンビニのパンを食べ終わった葵央が、真っ青な空を見上げている。
その顔を見て、胸がチリッと痛む。
だって『言っとけばよかった』って……未来のある言葉じゃない。
過去にだけ向けられた言葉で、終わりを確信しているからこその言葉。
そして、そんな葵央の言葉に落ち込んでいる自分にもほとほと呆れる。
「話を元に戻すけど。大村先輩のことで何かあったのか?」
「……べ、別に何もないよ」
「本当?」
まるで昨日の私と大村先輩を見てたかのような発言に一瞬声がひっくり返りそうになった。
平静を装ったけど、心臓はバクンバクンと大きく跳ねている。
大村先輩の告白のこと、葵央には言わない。
言いたくない。
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