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だって言ったら、この関係が終わってしまうでしょ。
葵央はこの30回のキスを“大村先輩に告白するための魔法のキス”だって言った。
それなら、大村先輩に告白された今、“魔法のキス”をする意味はない。
だから昨日、私は大村先輩への告白の返事を飲み込んだ。
先輩が『今はまだ答えは聞きたくないかな』って言ったからじゃない。
先輩との付き合いを迷っているからじゃない。
ただ葵央との“魔法のキス”を守りたかっただけ。
……最低だな、私。
30回のキスを始めた頃は拒否すらしていたのに、たかが5回キスしたくらいで、もうどうしてもこの時間を失いたくないって思ってしまっている自分がいる。
お弁当を食べて、キスをして。
周りから見たら楽しい恋人の時間。
葵央と気持ちがすれ違ってからずっと私は、こんな時間が欲しかった。
口には出さなかったけど、欲しくて欲しくてたまらなかった。
だから……手放したくないって思ってしまっている。
最低だってわかってる。
不毛だってわかってる。
でも、どうしても……。
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