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何言ってんだか、私。
一気に食欲がなくなって、お弁当があと少し残っていたけどふたを閉めて片付けた。
「色葉」
数秒の沈黙の後、肩を掴まれて、キスされると悟った時、校内放送が流れた。
“2年真方葵央、至急職員室まで”
呼ばれたのは葵央だった。
「え、葵央呼ばれてるよ」
「……ホントだね」
放送で呼び出しなんてそうそうあることじゃない。
それなのに葵央は他人事のように呟いた後、私の肩を引き寄せてキスをした。
一瞬の出来事。
意識をすっかり放送に持っていかれていた私は、まさかこのタイミングでキスされるとは思っていなかったから、目を見開いた。
「悪い、たぶんもう戻って来られないから教室に戻っといて」
「……うん」
私が頷いたのを見届けてから立ち上がり、葵央はこの場所から去って行く。
「はぁ……」
誰もいない1人になった体育館裏で、少し大きめのため息が漏れる。
お昼休み、まだあと20分くらいあるのにな。いっちゃった。
今日のキスはほんの一瞬触れただけだった。
それを寂しいと思ってしまった自分に気がついて、慌てて首を横に振った。
ってか、職員室に呼び出し……なんなんだろう?
葵央は、一瞬驚いた顔をしていたけど、その後は呼び出しに心当たりはあるかのように見えた。
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