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通話状態になったスマホ。
バクバクと心臓が痛いほどに大きく鼓動を打つけれど、もう止められなかった。
私はスマホを耳にあてた。
≪もしもし、葵央?留守電に入れておこうって思ったんだけど、出てくれてよかった。今日ね昼から仕事休み取れそうなの。会えない? 学校は何時に終わる?≫
聞こえてきたのは、少し急いでいる口調で親しげに葵央に話しかける女の人の声。
この人が“リナ”……。
『仕事休み取れそうなの』って言った。
っていうことは、大人の女の人。
私はスマホを耳にあてたまま、声が出せず、息すらできなかった。
≪葵央?≫
反応がないのを不思議に思ったのか、電話の向こうから窺うような声が聞こえて来た後、無言になった。
何も話さないんだから、おかしいって思われても仕方ない。
切らなきゃ。そう思ったんだけど、
≪……4時に青葉駅に来てくれる?待ってるわ≫
彼女はそう言い残して電話を切った。
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