あと25回

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私はスマホを耳から放し、真っ暗になった画面をじっと見つめていた。 今の人が葵央と一緒に歩いてたと噂になった人? 今の彼女? 私よりも好きになった人……? 疼くように痛くなった胸をどうすることも出来ずに、ただ立ち尽くしていた。 「色葉、何してるの?」 何分くらいたったか、背後から聞こえてきた声に、ビクリと大きく体を震わせた。 葵央の声。 どうしよう……戻ってきたんだ。 人の電話に勝手に出てしまった後ろめたさで体がこわばる。 葵央のスマホを握りしめたままだった。 「わ、忘れてるから……届けようかと思って……これ」 葵央の方に恐る恐る振り向いたと同時に、手に持っていたスマホを差し出した。 本当は電話に出てしまったことを謝らなきゃいけないのに。 ≪葵央、4時に青葉駅に来てね。待ってるわ≫ この言葉を伝えなきゃならないのに。 言えない……言えない。 言いたくない。 葵央の顔も見られない。 「そ、ありがとう」 「ごめん……私、教室に戻るね」 葵央がスマホを受け取った途端、私は逃げる様にその場を後にした。
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