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そのまま教室に戻るんじゃなくて、人気のない校舎の隅に逃げ込んだ後その場にうずくまった。
葵央のことを親しげに呼ぶあの人の声が耳から離れない。
高校生の私とは違う、落ち着いた大人の声だった。
あの人が噂の人なら、2人はもう1年ほどの知り合いになる。
葵央はあの人とどんな風に出会ったんだろう?
いつもどんな話をするんだろう?
どんな風に一緒の時間を過ごすんだろう?
あの人にはどんな風に触れるんだろう?
そんなことを考えれば、胸の中がどんどん澱んでいく。
あの人さえいなければと、黒く、黒く、真っ黒に澱んでいく。
自分の心の中が嫉妬でどんどん汚くなるのを感じて、純粋にただただ葵央が好きで好きでたまらなかった頃の私まで真っ黒に塗りつぶしてしまいそうで苦しい。
でもそんなどうしようもない感情をどうやって消せばいいのか今はわからないよ。
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