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久しぶりにかかってきた電話が嬉しくて嬉しくて、張り切って出た私に葵央は引っ越しのことを一言だけ伝えた。
『引越したんだ青葉に。父さんの仕事の都合』
うちから青葉までは電車で20分以上かかる。
前は中学の同じ校区内だったうちと葵央の家。
自転車で10分くらいの距離だったのに、ずいぶん遠くなってしまった。
葵央から引越したと聞かされた時は、葵央がバイトばかりになって寂しかった頃だったから余計にショックが大きかったんだ。
『そ、そっか、遊びに行っていい?』
『まだ散らかってるから。落ち着いたら……』
『うん、じゃあ落ち着いたら教えてね』
でも結局、葵央は私を家に呼んでくれることはなかった。
密かに待っていたんだけどな……。
あの人は、葵央の家に行ったりしてるのかな?
「……」
胸の奥がグッと詰まるように痛くなったから、その苦しさを紛らわせるために小さく深呼吸をした時だった。
手に持っていたスマホがブルブルと震え出した。
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