月を見しかな

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 ノートにシャーペンを走らせていた手を止めて、俺は携帯のディスプレイを覗き込んだ。  この動作を、学校から帰ってきてから何回繰り返している事か。  画面は相変わらず時刻だけを表示させ、 着信もメールも、届いた気配がない。  参考書に意識を戻すが、一向に集中出来ないでいた。  いい加減諦めろと、心の中でもう1人の冷めた自分が囁く。  連絡はこないと判っているクセに、縋るように何度も携帯を覗き込んでいた。 『じゃあ。俺に一緒に行く奴がいなかった ら、付き合ってくれんのかよ?』  織田弘人の言った言葉をを思い出し、何気に言っただろう言葉を、何度も頭の中で反芻する。  織田とは、中学の頃から何度か同じクラ スになった。  親友とまでは言わないが、顔を合わせれ ば挨拶を交わすし、休み時間にはバカ話で盛り上がりもする。  居心地のいい友人だ。  だがいつの間にか、あいつの隣には、当然のように別の奴が立っていた。  ――磐木 祐志。  磐木は決して嫌な奴じゃない。只、織田とは少し毛色が違う、と思った。
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