月を見しかな

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 なのに。なぜか織田の方が磐木に付いて回っている。  そしていつからか、それに嫉妬している自分がいた。  磐木が『弘人』と呼ぶから、頑なに俺は『織田』と名字で呼んだ。  ずっと友情の嫉妬だと思っていたのに、今日、違うと自覚した。  これは、恋愛感情なんだと。  そして織田にとって俺は、どこまでも磐木の次なんだと、はっきりと目の前に突き付けられた。 『なー、なー、相沢』  甘えたようにそう言われ、磐木とは行かないのかと、問うために磐木に視線を流した。  そして、違うと気付いた。  ――磐木が行くのは、前提なんだ。 『ま、一緒に行く奴がどーしてもいない時だけ、メールくれ』  あれは、『磐木と行かないのなら』と、 そう言ったも同然だった。  磐木は無表情に俺を見返し、その言葉を受け流した。あいつにはきっと、俺が言いたい事は伝わったのに違いない。  だが肝心な奴には、伝わらないままだったけれど……。  溜め息混じりに再びシャーペンを持ったところで、携帯が鳴った。  まさか、と思いつつも、すぐに画面を確認する。
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