見つめる先

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 その日の朝はいつもとかわらない朝だ。  景気のいいスマホのアラームで太朗は目を覚ます。枕元にあるうるさいスマホを手探りで探しあてると、眠い目を擦りながらアラームを停止させて時間を確認する。画面の時計は6時31分と、起きる時間から1分ほど過ぎていた。  気怠い身体で布団から這い出ると、壁に掛かっている制服に手を伸ばし着替えを始める。  詰襟の黒い制服。雪の結晶をあしらった校章入りのボタンを留め終えたところで 『いつまで寝てるの、太朗。朝食が出来たんだから下りてきなさい!』  1階下にいる母親の声が扉越しに聞こえた。 「今、行くよ!」  聞こえるよう大声で返事を返すと、筆記用具と暇つぶしの漫画等が入った鞄を手に自室を後にした。  木造二階建ての古くとも丁寧に掃除された階段を下りる。 「おはよう、母さん」  台所に入り挨拶を済ませて自分の席に座った。 「はい。おはよう」  振り返りながら母親は言うと、湯気の上る味噌汁を太朗の前に置く。それから、自分の分を置き正面の席に腰かけると、2人は頂きますの合図で食事を始めた。  これといった会話はなく、静かな食事が続く。
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