プロローグ

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 一般的に見れば俺はいわゆる青春の日々を送っているのだと思う。そこそこ活動的な部活に入って、週に二回程度の頻度でバイトを入れつつ、まあまあ仲の良い友人たちがいる。リアルは十分に充実していると言った意味ではリア充なのだろう。  傍から気になるのは女関係で何も浮いた話がない、というくらいだろう。校内恋愛が少なくないこの高校で、俺はといえば「ずっと片想いの相手がいる」と思われている。そういう設定にしておいた方が色々と楽だと気がついたからそう宣言することにしている。高校に入りたての頃、彼氏作りに必死の女子数名に告られはしたが、全てそう言って断った。でもまぁ、俺に気になる人がいたというのは確かにただの設定なわけでもないが。  とにもかくにも、高校一年間がやっと過ぎ去ったが、全体的に無気力ながらも一般的な学生生活らしい生活はちゃんと辿れているのではないかと思う。それくらいには、問題なく周囲に紛れ込んでいるはずだ。 「柳田?」 「何だ?」  席に着くと最近になり昼食を一緒に食うようになった竹本に名を呼ばれ後ろを振り返った。 「お前入学式終わった後、暇?」 「何で?」 「他のメンツとカラオケに行くんだけど、暇だったらたまには付き合えよってことよ」 「あー」  生返事を返す。最近の流行曲もわからない人間がカラオケの楽しさが分かるわけがない。カラオケに行くことに何も生産性を感じない。 「悪いけどバイト入れてるわ」 「いっつも忙しそうだけど、お前ちゃんと遊んでんのか??」  暇な時間を作るのが嫌なのだ。勿体無いと思ってしまう。友人付き合いでさえ面倒だと思うのは性根が腐っていると自分でもそう思う。こうして心配する素振りを見せながらも、心中ではどうせ「またテキトーな理由で断りやがった」と思っているに違いない。まぁ、まさしく「テキトーな理由」ではあるが。  この辺りでもうお分かりだろうが、俺は「一般的な高校生活」を送るには少々捻くれた性格をしている。自覚をしてはいるが直そうと思って直せるものでもないし、そうするには労力と金を要する。勿論、そんな対価を支払うのが非常に面倒なので、無理やりにでも俺を揺さぶるような変人に出会わない限りは直すなんて不可能だろう。
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