賑やかなり

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賑やかなり

約束から一週間。 なかなか会いに行けない日が続いた。 残業に休日出勤。 仕事がたてこんでいた。 真木 広之進 31歳。 趣味はスポーツと読書。 最近は洒落た古本屋に通っていた。 随分前から彼― 多々良 結のことは知っていた。 一年ほど前から一方的に知っていた。頻繁に通いだしたのは最近だ。 あの可愛らしい顔の造りは一度見たら忘れられない。 ある意味衝撃的な存在だった。 客と店員。 接点はそれだけだった。 自分が結を助けるまではー。 (助ける人間は選ぶべきだ、か。我ながらなんて浅ましい。) ならなぜ自分は結を助けたのか、 (下心、…に入るのか?) 少なくとも結のように、誰これ構わず助けるタイプではない。 席を譲るくらいの親切心くらいだろう。 「専務、熱心ですねぇ。読書ですか?流石できる男は違うなぁ」 若い社員に言われ無意識に広げた経済雑誌を軽く上げる 「読書はいいぞ。中古だが。」 「専務でも古本屋とか行くんですね。」 「この前、ポイントが貯まったから次行くときは300円引きだ。」 「なんか楽しそうですね。」 楽しい、か。 「橘、今日は早く上がれそうか?」 秘書の橘に訪ねる 「大丈夫そうです。車出しますか?」 「いや、歩く。」 「専務、デートですか?最近お疲れみたいですし、癒されてきてください。」 「言ってくる」 あえて否定しなかった うちの秘書は相変わらず鋭いが、甘い。 上司が一回りも年下の子に癒されにいくとは露知らず。
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