12人が本棚に入れています
本棚に追加
高校卒業してから早二年。
多々良 結は家業の古本堂を手伝っている。
毎日嬉々として花街に出掛けていく祖父。
両親は仕事好きで、一年を通して二人で海外を飛び回っている。
自由な家族に囲まれて育ったせいか、愛らしいと称される見かけに似合わず気苦労が絶えず所帯染みていると言われることがままある。
バイトを考えながら値札を貼っていく。
「経済雑誌のコーナーってどこだったかな?」
頭上から降るいい声に営業スマイルを取り戻す。
手元の経済雑誌を数冊渡す。
「ちょうど今移行中で..あ、ここにあります。」
高そうなスーツ姿がよく似合うエリートサラリーマン…。
「なら見つからないわけだ。」
「すいません。」
じゃあこれを、その流れで会計に入る。
慣れた手つきでレジを打ちカードにポイントを押していく。
「ポイントいっぱいなので次回から300円引きになります。」
包装し、釣りとレシートを渡す。
「ラッキーだ。君バイト?」
「一応正社員です。いつもご利用ありがとうございます。」
(最近よく来てくれる人だ)
古本屋でさえ絵になるから目立つ。
それくらい男前だ。
「この店のアンティーク調が素敵でね。気に入ってるんだ。またくるよ。」
はしたないと思いつつ、にやける口元を手で隠す。
アンティーク調は結の趣味だ。
最初のコメントを投稿しよう!