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「たまには息抜きも必要よ?」
別れ際に若菜に言われる。
今日が息抜きのつもりだったが思わぬ悩みごとが増えた。
近いうちに、瑞希には会わなければならない。
帰り際に、スーパーと薬局にもより用事を済ませるととちょうど空は茜色に染まっていた。
「あっ、結さんっ!」
聞き覚えのある声に反射的に躰が強張る。
声の主は、先日の青年。
名前まで奴の耳に入ったらしい。
「君..。」
「いや、マジでストーカーじゃないですっ。そんなことはしません!萌えと執着は違います!!」
「萌えって..」
確かに偶然だろう。
彼がやってきた方角からするに、
今日も店に行ったのだろう。
爺の花街通いといい勝負だな、内心毒つく。
店に通う以上、客なのであまり手荒な真似はしたくない。
「今日も可愛いッスね!」
まったくこの男は..
「荷物持ちますよ!俺力だけはあるんです!」
目敏く結の荷物に目をつけエコバッグをひっくる
流石に我慢の限界だ
「いや、」
『君の親切心は迷惑と紙一重だな。相手が嫌がってるのがなぜ分からない?』
耳辺りのいい声。
「貴方は..」
先日のスーツの男だった。
「あんた誰?」
「彼とはちょっとした知り合いでね。
困っていたから助けたまでだ。
君の方こそ誰かな?
随分こまらせてるみたいだな。」
「俺は、この人には恩がある!」
きっぱりと言い切る。
「それに..俺はこの人が好きだ。一目惚れなんだ。結さん。」
またこの男はとんでもないことを..。
この人は眉一つ動かさない。
涼しい顔で、だから?とでも聞いているようだ。
「彼が好きか。成程。
だが彼は迷惑はしてるようだ。
今もう一度告白して返事をもらって諦めるか、彼の側に堂々と並べる道を探すんだな。」
以外なことに、奴は後者を選んだ。
どうやら今告白しても脈がないことだけは、伝わったようだ。
こんなにもあっさり片付くとは。
「ありがとうございます。本当に..」
「彼とか君とか..名前もお互いに知らなかったな。」
「多々良 結です。本当にありがとうございます。」
「真木だ。」
名刺入れから名刺を出して差し出す。
【真木 広之進】
結でも知ってる大手に勤めついた。
しかも、役職は
「専務..」
(やっぱりすごい人だ。)
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