第1話  イエローカンガルーポー

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 全部の書類を読み終わり、俺はため息を吐く。 相田 希、16歳。高校生かよ。 先方とは会ったことがあるらしい。いつ会ったのかまで、書いておいて欲しかった。 「あんなに仲良くしてた」とか、希さん本人とも会っているみたいだ。  こちらの学校に編入。学校名は「鈴峯女学園(すずがみねじょがくえん)」。 地元では有名なお嬢様学校である。小・中・高一貫校で、別世界の雰囲気を持つ。 そんな学校にいつ、編入試験を受けたのだろうか。 それよりも、そこに通うことができる、それ自体が相田家の格を感じ取ってしまう。 そんなお嬢様が俺にべた惚れ……それは、考えないようにしよう。 本人から聞いているわけではない、親の言うことである。 親は結婚させたいが、子供は違う……よくある話である。今の俺の状況もそれに当たるし。 「近々訪ねてくる」……挨拶くらいはした方がいいのだろうか。 完全無視は、後々怖い。というか、面倒くさい。親が乗り気なので尚更である。 16歳ということは、相手もそこまで乗り気でない可能性もある。 相手さんが嫌と言ってくれると、こちらは助かる。その方針で行こう。 その前に親父に抗議だ。そう思い、スマホを取り出す。 ピンポーン ピンポーン  その瞬間、呼び鈴が鳴る。 新聞屋か、公共放送か、はたまた宗教か。 1人暮らしのアパートの訪問者は碌なものがいない。無視に限る。 ピンポーン ピンポーン ピンポーン  なおも鳴り続ける。しつこいなぁ……無視だ、無視。 無視を決め込んでいると、30秒くらいで止んだ。 今回のは、根性入れすぎだろう……俺はそう思いながら安堵する。
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