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姫の悲鳴が聞こえた。
真っ暗な夜に曲者が襲っているのではないかと思い、眠り続けたい私の重い身体を起こした。
そして私は姫の部屋に向かうために自分の部屋の扉を開けた。
昼間ならこういう時に雇ってる者達がいるが、全員今日に限って体調を崩している。
さらに姫以外の家族はみな城から出ている。
だから私が何とかしなければと思ったが、この有様である。
廊下を急いで駆ける。普段なら走ってはならない場所だが、今回ばかりは善は急げということで許してもらおう。
私は裸足のままで駆けていた。足が滑りそうになる。
電池を付けてないから何があるのか分からなかった。
それでも姫の部屋に辿り着いた。
引き戸の窪み部分に指をかけたが、何かに触れて指が滑ってしまった。廊下の何かに似ていた。
私はそれでも何とか指でそれを開けた。
「姫君、ご無事ですか?」
私の後ろに満月が輝いていた。先程まで雲に隠れては現れを繰り返していたのだろう。
それよりも私はその月の光に映し出される姫の部屋に目を疑った。
そこには血まみれの床に飛び散った血が模様を描いてるかのような壁、そして頭と体が首を境に離れている姫がいた。
「ひ……め……ぎみ……」
目の前の光景に思わず言葉が詰まる。
私は思わず、自分の身体を見た。
手足共に血だらけになっていた。
不思議なことに私の胴体まで血飛沫になっている。
私は彼女の部屋の扉と廊下を見た。
私が滑らせていた物は赤い液体になっていた。
ここまで続いてるってことは姫の血であろう。
私は憎悪に襲われた。
姫君をこんな目に合わせたのは私ではないか、と。
私が落ち着きがない状況に声をかける者がいた。
「じいや、大丈夫?そんなに血だらけになって……」
さらに恐怖が私を襲った。その声の主は姫だった。
「ひめ……さま……」
すると彼女の口元からにやりと笑い、唇の両端から一筋の血の川が流れ始めた。
そして目を開いてこう言う。
「じいや?平気?」
彼女の身体が足を折り曲げ立ち上がった。
そしてゆっくり一歩ずつ私に近寄る。
「ひ……め……」
私の頭の中で恐怖が思考を乱した。
そして一つの決断に辿り着いた。
あれは姫ではない、と。
「じい……や……?」
私は心に決意を固めて言う。
「来るな、化け物!!」
姫は一瞬身動きを止めたが、こう言った。
「父上たちに申すぞ?」
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