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そしてしばらくして無数の姫の身体が風呂場に来た。
広いだけあってかなり入って来る。
「姫君、じいやはこちらですぞ」
姫様の身体は風呂場の床に足が付いていく。
そして滑って身体が倒れていく。
なぜなら私がそこに洗剤を付けてブラシで敷いていったからだ。
私は広い湯船の中にいた。
足に何かが触れた。
温かい感触と冷たい感触が同時に。
そして近くから水の音が聞こえる。
私は湯船の給水口を見た。そこから水が入って来る。
私はその場から出ようとした。
動かない。
「じいや」
湯船の底から声が下。
黒い何かがそこにひかれているのは湯船に入る前に知っていた。
別に平気だろうと思っていた。
しかしその黒い何かの間から湧き出てきた白く伸びた手に私の両足は掴まっていた。
だから冷たかったのだ。
そして黒い何かが、一斉に白くなった。
黒い瞳に凛とした鼻と唇。
そう、そこにあったのは湯船いっぱいにひかれていた無数の姫の頭だった。
湯がものすごい勢いで入って行く。
姫の悲鳴が一斉に鳴り響いた。
私は湯船から出ようと両手で湯船の縁に力を身体に対して垂直込めた。
やはり動かない。
顔をしたに向けていたので、その先に無数の白い足があるのに気付くのは遅くなかった。
目の前を見たら、三、四人の姫が両腕で私を押した。バランスが崩れた私は倒れた。
そして白い手が何本も生えてきて身体全体に掴まれた。
身動きが出来ない。
お湯が身体に浸っていく。
「じいや!!」
私はその声にこう思った。
もうやめてくれ、と。
私は湯船に浸りながら目を閉じた。
死を覚悟して……。
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