姫の悲鳴

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「……や……じ……や……じいや!!」 私を何度も呼ぶその声に私は目を開けた。 「ひめ?」 そこには泣きそうな姫君が私を見ている。 いや、これは化け物だ。 「殺すならはよ、殺せ。化け物!!」 「何を申しておるの?寝言と言い、今と言い……」 寝言? どういうことだろうと思い、私は身体を起こした。 そして寝ていた場所を見る。 目を覚まして見上げた天井から予測はしていたが、ここは私の部屋だ。 「姫君、どうしてこちらへ?」 「なっ……。私が寂しくて寝れないから一緒に寝てあげると言ったではないか。だが、実際に寝てみてどうだ?じいやは汗かいて布団濡らすし私を化け物呼ばわりするし……。とにかくうるさいしうるさいし……」 姫は眉間にシワを寄せて言い終えた後、口を膨らませてしまった。 私は姫に近寄り、そっと抱きついた。 「じいや?」 「姫、じいやは好きか?」 「普通の人よりも好きだよ」 それで何よりです、と思ってさらに抱きしめる力を強くした。 「じいや、落ちちゃうでしょ?」 落ちる?何が? そう思って抱きしめていた身体を起こして姫に向き合う。 特に落とすものはない。 「姫、何を落とすのですか?」 私は率直に聞いてみた。 「何も落とさないわよ?じいやが落ちたとかうるさかったので言ってみた」 やはりアレは夢だったのだろうか。 私は枕元にある剣の鞘を抜いてみた。 「じいや、何か悪いこと言った?私を斬るの?じい……何これ?」 私がそれを見て身動きを止めていたが、彼女も気が付いたのだろう。 その剣には赤黒い物がへばりついていた。 まさかとは思うが、これは。 私は引き戸を開けようとした。 「じいや、どこに行くの?」 後ろから姫が声をかけてきた。 「これを洗いに……ですかな」 「姫も付いて行ってもいい?」 危ないからそこに居なさいとも言えない。姫がここにいるのは寂しいからだ。 「付いて来なさい」 私がそう言うと姫は取れることのない首を静かに縦に振った。 満月に照らされた廊下にも赤黒い物がへばりついていた。 そしてその不気味さが床の冷気と共に私の足の裏に伝わってきた。 「姫、寒くないですか?」 「大丈夫。でも、これって何?」 「これは……先に行けば分かるかもです」 もし夢の終わり方があんな感じであるのならあそこに何かあるはずだ。そう、私たちが向かってる先に……。
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