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私たちはその赤黒い物が続く先端に付いた。
それは風呂場の湯船の中だった。
そこに人が倒れていた。
その人は目を開けたまま身動き一つもしないで倒れていた。
やっと思い出した。
私はこの人を斬ったのだということを。
物騒な物音が聞こえてきたなぁと思って寝ている姫を起さずにその主を探していたら、姫の部屋にいた彼に会ったのだ。
「貴様、何をしておる」
そう聞いてみたが、答えずに剣で斬りかかろうとしてきた。
私はそれを防ぐ為に剣を交えた。
そう、その時に彼が姫の部屋から逃げた血が廊下に付いたのだろう。
そして最後に逃げ回ってきた彼を留めに刺した場所が湯船だった。
彼は湯船の縁に足が引っかかって倒れた。私はそれを見計らって首元に剣を向けようとした。
しかし床にあった洗剤か何かで足を滑らせてしまい、目をつぶって前のめりに倒れ込んでしまった。
そして私が目を開けると、そこには私の剣で刺された彼がそこにいた。
私はそのまま剣を鞘に収めて、これを置くためとタオルを取るために部屋に戻った。
しかし姫がちょうど目を覚ましてしまって私は何も無かったかのようにするために狸寝入りをするつもりだったが、眠ってしまったのだ。
そして今に至るわけである。
姫はまた悲鳴をあげていた。
「姫、落ち着いて。あれは血を流す人形である。人ではない」
姫の悲鳴は止まらない。
姫の首を斬ってしまえば簡単ではあるが、それは出来ない。
「姫!!」
私は姫を平手打ちした。
すると悲鳴は止まった。
「ごめんなさい……私を守る為に彼を殺したんですよね……」
「……そうです」
姫は自ら私にしばらく抱きついた後、私の剣の血を流すのを見たり、廊下の血を拭くのを手伝ったりなどした。
そしてその晩は誰もいない部屋で二人で寝たのである。
その後、彼の件は殿の力により無事解消出来た。
お陰様で私は姫たちに離れることなく、仕えることが出来たのである。
私の命が尽きるまでは……。
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