おとぎの国

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考え込む私の顔をロルが覗き込む。 おかしいのはあんただ。という言葉をグッと飲み込み、私はにっこりと笑った。 「いいえ。すごいですね、おとぎの国なんて!」 そう言うとロルは花が咲いたようにパッと顔を輝かせた。 「信じて頂けるのですか?」 そのあまりにも嬉しそうな顔に少し胸を痛めながらも、私は表情を崩さず続ける。 「はい、もちろん。色々とありがとうございました。本当に助かりました」 「いえ、どうぞお気になさらず」 終始微笑みを浮かべたロルと顔に笑顔を貼り付けた私の間に、和やかなムードが流れる。それを壊さぬよう、できるだけ柔らかい声で私は「ロル」と呼びかけた。 「紅茶のおかわり、いただけますか?」 「はい、喜んで」 ロルがティーカップを片手に後ろを向く。 その瞬間、私は布団を跳ね除けると、勢いよくベッドから飛び出した。 そして可愛らしい扉を目掛け、一目散に外へ走りだす。 後ろから「えっ」という小さな驚きと戸惑いを含んだ声が聞こえる。私を呼び止める声を振り切るように草原を駆け抜け、森の中へ入った。 こうして私は見事、頭のおかしい人から逃げおおせたのだった。 ◯ そして今、私は森を彷徨っている。ここは全く見知らぬ土地 。右も左もわからない。 少しでも見つかりにくいところへと思い目の前の森に入ったのはいいのだが、見知らぬ土地で見知らぬ森に入るなど、自分から遭難しに行っているようなものだと今更気づいた。 枝をかき分けながら前へ進み、ふと上を見ると、小高い丘が見えた。 「上から見下ろせば、森を抜ける道がわかるかも」 私はその丘に向かって歩くことにした。 何度も転びそうになりながら丘を目指す。 いきなり飛び出してきたため、足元は裸足だった。そしてなぜか見覚えのない白いワンピースを着ている。まさかあの人が私に着せたのだろうか。その様子を想像して、私は顔が熱くなるのを感じた。 「やっと着いた…」 息も絶え絶えにやっとたどり着いた丘は、思ったよりも高く、随分遠くの方まで見渡せそうだった。崖のギリギリまで近づくと、ぱっと視界が開けた。 そして思わず、その場にへたり込む。 「嘘でしょ…」 目の前には小さな家々が並び、街が広がっていた。 そしてそのさらに向こうには お城があった。 1つ2つではない。 テーマパークにでもありそうなその立派なお城は確認できるだけでもぽつりぽつりと5つはある。
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