おとぎの国

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少し遠くてわかりにくいがデザインはどれも違うようだ。 現代にこんなお城が、それも目に見える範囲で複数あるだなんて信じられない。もしテーマパークだとしても莫大な資金が掛かるだろう。とても現実的ではない。あり得ない。 こんなの、まるで 「お伽話の世界じゃない…」 思わず呟いてしまったあとで慌てて口を覆った。ロルの言葉が蘇る。 『ここは、おとぎの国なんです』 まさかあれが本当だったと言うのか。とてもじゃないが信じられない。しかし目に映るこの光景が現実ならば、信じる他ないのだろう。 私はそのまま仰向けにごろんと芝生に寝転び、空を見た。太陽はもう随分傾いていた。 「どうやって帰ればいいんだろう」 無意識にポケットから携帯電話を取り出そうとして、自分の服ではないことを思い出す。ポケットの中からチャリンと小さな音がして、何かが手に触れた。取り出してみると、小さな鍵だった。チェーンが通されており、ネックレスみたいに首にかけられるようになっている。 「なんだろう、これ…」 私はこれからもうどうしていいかもわからず、ポケットから出てきたそれを試しに首にかけ、ぼうっと眺めた。 「誰だ!そこにいるのは!」 背後から唐突に響き渡る声に飛び上がるように起きる。見ると、鎧を着た兵士のような男が3人私を睨みつけていた。突然のことに私は竦み上がり、胸元の鍵をぎゅっと握りしめた。 「怪しいなお前。そこで何をしていた」 1人の兵士が詰め寄る。私はうまく声が出せず、震える声で答えた。 「私はただ、ここから帰ろうと…」 「帰る?お前、どこの国のものだ」 「に、日本です」 「ニホン…?そのような国聞いたことがない」 兵士たちは私にじりじりと歩みより、剣を抜く。思わず一歩下がるが、すぐ後ろは崖だ。 「どうも怪しい」 「さてはお前、姫のお命を狙う魔女だな?」 「え、魔女?ち、違います!」 「この恐ろしい魔女め!姫の命は渡さぬ!」 訝しげに私を見つめる兵士たちに向かって慌てて否定するが、聞く耳を持たない。剣が振り下ろされる。 「ひゃっ」 間一髪で避けると、私はまた森の中へ走り抜けた。 「待て!逃げると思うな!」 後ろからガサガサと兵士たちが追ってくる音がする。私は足をもつれさせながら必死で走るが、いきなり酷使した足はもう限界に近づいていた。 「あっ…!」 私は小さな木の根っこに引っかかり、転んでしまった。
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