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2人は押し黙った。何かまずいことを聞いたのだろうか。ロルは手を口元に持っていき何かを考えてから「支配と守護は表裏一体なんです」とぽつりと言った。
「シンデレラがもし支配を逃れ、自分の思うまま生きたとします。
するとその時点で彼女はみんなの求めるシンデレラでなくなってしまう。
それはシンデレラしての価値がなくなることに等しい。そんなシンデレラ誰もいらない、と支配と同時に守護の魔法もなくなってしまうのです」
「え?それって…」
「消えちゃうってことだよ」
クロが吐き捨てるように言う。
「何が?」
「存在が」
「死ぬってこと?」
「それよりもっと悪い。この世界では死ってのは大したことじゃないんだ。死んでもまたすぐ生き返る」
また頭の中にクエスチョンマークが浮かぶ。死んでも生き返る、というのはどういうメカニズムなのだろうか。しかしここはおとぎの国、なんでもありな気がする。ということは、もし今日、あの森で兵士に殺されていたとしても、また生き返れたということだろうか。
「あ、でも君は無理だからね。死んじゃだめだよ」
ぴしゃりとクロが言う。まるで心が読まれていたかのようなタイミングに驚きつつも、「なんで?」と聞き返すと、クロはまた呆れたように溜息をつく。
「あのね、話聞いてた?名前には守護の力があるの。この国では名前によって、その存在を絶対的に守られてるの。だからたとえ肉体が死んでもまた生き返る。この国では存在し続ける。それでもわからないならもう一度聞いてあげるよ。君、名前は?」
「あ…」
そこまで言われてようやく、私は自分の名前を思い出せないことを、思い出した。守護がないとはそういうことだったのか。
「まったく、理解力がないにも程があるよ」
見下すように言われ、ムッとする。しかし事実なので言い返せないでいると、黙って見ていたロルが、クロにデコピンをした。見た目のわりに威力は強いようで、クロは声にならない声を上げながら額を押さえて悶え苦しんでいる。いい気味だ。少しだけ胸がスッとする。
「話を戻しますね」と何事もなかったかのようにロルが微笑む。
「守護がなくなると、消えてしまいます。
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