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昨晩、ロルとクロの2人が説明してくれたことは、そう簡単に理解できるものではなかった。
名前の持つ支配や守護、そしてそれに縛られるここの住人たち。
私がここに住むと決まってからも、その話はまだしばらく続いた。
まず、お伽話の登場人物が暮らすこの国には、物語ごとにいくつものまとまりがあり、それは「タウン」と呼ばれているらしい。
例えば、シンデレラのシンデレラタウン、白雪姫の白雪姫タウン、不思議の国のアリスのアリスタウン…という具合である。
あまりの単純さに「そのまんまだね」と笑うと、2人もそう思っているのか「わかりやすいに越したことはない」と苦笑していた。
各タウンにはその物語の登場人物たちが住んでいる。
しかし全員というわけではないらしい。
物語の悪役たち、つまり魔女や継母、狼たちはいない。
じゃあどこにいるのか、と尋ねると2人は言葉を濁した。「それはまあ、そのうち、ね」というクロの言葉は一体どういう意味だったのだろうか、と何口目かの目玉焼きを口に運びながら考える。
そしてふと我に返り、「そういえば」とキッチンに立つロルを見た。
「そういえば、クロは?」
「ああ、彼は朝が弱いんですよ。もう起きてくると思います」
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