シンデレラタウン

3/13
前へ
/36ページ
次へ
昨晩、ロルとクロの2人が説明してくれたことは、そう簡単に理解できるものではなかった。 名前の持つ支配や守護、そしてそれに縛られるここの住人たち。 私がここに住むと決まってからも、その話はまだしばらく続いた。 まず、お伽話の登場人物が暮らすこの国には、物語ごとにいくつものまとまりがあり、それは「タウン」と呼ばれているらしい。 例えば、シンデレラのシンデレラタウン、白雪姫の白雪姫タウン、不思議の国のアリスのアリスタウン…という具合である。 あまりの単純さに「そのまんまだね」と笑うと、2人もそう思っているのか「わかりやすいに越したことはない」と苦笑していた。 各タウンにはその物語の登場人物たちが住んでいる。 しかし全員というわけではないらしい。 物語の悪役たち、つまり魔女や継母、狼たちはいない。 じゃあどこにいるのか、と尋ねると2人は言葉を濁した。「それはまあ、そのうち、ね」というクロの言葉は一体どういう意味だったのだろうか、と何口目かの目玉焼きを口に運びながら考える。 そしてふと我に返り、「そういえば」とキッチンに立つロルを見た。 「そういえば、クロは?」 「ああ、彼は朝が弱いんですよ。もう起きてくると思います」     
/36ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加