オーナー大槻 1 

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「 オーツキ寮の部屋は退出できたかな? ん? 」 ええ、渡辺はオーナールームのソファーに座り、そう答える。 「 そうかそうか!よしよし。ええぞええぞ。」 「 でも、何のために…… あの寮は僕以外誰も…… やはり、   取り壊しですか? 」 「 まあ……その前にちょっとね……… 」 「 所で今日、今から僕と行きたい場所があるって、 一体、何処に出張するのです? 」 「 まあまあ急かさずに、まずコレを見てくれないか?   渡辺君にしか出来ない仕事なんだ。」 そう言いながら、大槻は緑の薄い手袋をした手で リモコンを操作し、ディスプレイのスイッチを入れる。 そのゴム手がアボガド君の物だと、渡辺は気がつかない。いや、 そもそも手袋をしている事にも。それだけ今の彼は浮き足立っていた。 他の社員には絶対秘密の一大事業を、 オーナーから託され、呼び出されたのだから。 「 良いか?くれぐれもこの事は、他言無用だぞ 」 「 ええ、ええ、で、どのような企画でしょう…… 」 「 驚くなよ…… この、映像に! ふふっ…… 」 今から行く出張もその一環なのだ。しかもオーナーと二人だと言う。 自然と心が浮つく……自分にしか出来ない…… 自分にしか……… あのボロボロの寮からの退出は、昇進を意味しているのでは? きっとそうだ。幹部に、あんな部屋は似合わないから………… が、大槻がその企画を収めたメモリーカードを再生させた 瞬間、眩暈がする程の衝撃に襲われ、 ふわふわした気持ちが一瞬で吹き飛ばされた。 なぜか? そこには、忘れもしない、 8年前の、地下の、個室での、アノ犯罪映像が、 それは見事なまでに鮮明に映し出されていたからだ。 しかも音まで拾われているではないか。 「 あの部屋に、防犯カメラが吊るしてあったのわからなかった?   君、よっぽど興奮していたのか、全く気付かなかったみたいね。   まあ、アボガド君の視界は狭いからね…… 。 」 ---- - - 知っ……て……た …… なら…… 何で…… …… 時間をたっぷりと掛け、たったそれだけのセリフを、 渡辺はようやく絞り出す事が出来た。
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