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「 事を荒立てたくなかったし、何より君は安月給に耐えられる
稀有な独身中年男性だからね。迷ったけど、結局琴美ちゃんも
誰にも言わなかったみたいだし……… 」
「 じゃ、じゃあな んで…… 今、頃………こんな……… 」
「 事情が変わったんだ……ああ、何度見てもスゴイ映像だ……
これはね渡辺くん、今となっては、お宝映像なんだよ。」
画面をうっとりと眺めながら、大槻はテーブルに一冊の漫画雑誌を置く。
「 漫画、読まない? ほら……表紙をよくご覧な。」
「 っ!? あ、…… ああっ!!! 」
「 だろ? この水着の子……間違いないよね ? 」
「 ………… あ………… 嘘…… だ…… 」
「 私だって驚いたさ、青年誌が好きでよく読むんだが、
1ヶ月ほど前かな……偶然見つけてしまったんだよね。
真逆、アイドルになってたなんてねえ! 」
表紙に刻まれたKOTOMIの芸名を背景に、
成長した20歳の鮎川 琴美が、そこにいた。
美しく開花した鮎川 琴美が、そこにいたのだ。
今にもビキニからこぼれ落ちそうな、形の良い乳房。
まだ蕾だった頃の感触が映像とシンクロし、鮮明に蘇る。
破棄した筈の罪の記憶が、ほじくり返された。
暴発してしまったあの日……
お漏らしを覚悟した琴美は、咄嗟に下半身の衣類を脱ぎ捨て脱力した。
渡辺はそれと同時に射精していたので、その時の琴美の表情を
見る余裕も無かったのだが、カメラはしっかりと捉えていた。
瞳を閉じ眉を切なく歪め、唇を半開きにする、恍惚の表情を。
事が終わり、夢遊病者の様に……洗面台のタオルで濡れた足を拭き……
黙って衣類を身につけて、画面から消えてゆく……
等身大の人形状態で放心するアボガド君に一声かけて。
トイレはもう行かなくていいの? おじさん ----- - ? - - -
これだ。このサディスティックで冷たい声に、
渡辺の心臓は8年前同様、凍てつき止まりそうになった。
「 ほら、この雑誌のインタビューなんて可愛いじゃないか。
お酒、解禁ですっ♪ 私、チューハイのぶどう味に超ハマって
いるんですよwww だってさ! ほろ酔い姿を想像してみたまえっ! 」
「 ……………………………………… 」
「 ……渡辺君、………渡辺君、聞いてるのか? 大丈夫かね!? 」
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