オーナー大槻 1 

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「 はっ! ……解雇ですか。だから寮を出て行けと……… 」 「 いや、話を聞いてくれ渡辺君……… 」 「 いや、いや、オーナー…… 僕の様な人間は、いつも失敗ばかりで、   わざわざこんな物を引っぱり出さなくとも、いつだってそれは   覚悟してましたんで………… 」 「 いや、勘違いするな。そんな事で解決できると思っているのか?   気が付かんか? もう、そんな立場じゃないだろう? 」 「 ど……… どう言う………事……… 」 「 例えば、御両親はまだ健在だろ?    こんな代物を実家に送ったら泣くよね? ん? 」 気が遠くなる。渡辺はようやく、自分が脅迫されている事に気付いた。 「 君の野球人生が哀れでならなかった………   だから今まで黙っててあげたし、アボガド君も廃止したろ?   あの後すぐに地下部屋も撤去し事件を揉み消したんだ。   だが、さっきも言ったように事情が変わってしまったんだ。」 「 僕に……どうしろと………… 」 「 KOTOMI本人に直接渡して欲しいものがあるんだ。   いやなに、ファンレターみたいなもんだ。」 オーナーの手に、封筒が見えた。 そこで渡辺はようやくゴム手に気付く。 「 そ………それを、KOTOMI に? どうやって? 」 「 握手会で渡す。   相手はまだまだ知名度は高くないが、全国区だ。   三流所の御当地アイドルじゃないからな……   郵送など論外だと思わんか?   私の熱い想いが本人まで届かんだろう。」 「 なぜ僕が…… オーナーのファンレターを…… 」 「 絶対に、KOTOMIに開封して欲しいからだ。   つまり、君でなければ相手にされないって事だ。」 「 な……なぜです!? 僕はあの時、野球拳に勝って、その……   最後まで、素顔を晒していない!    一人どのくらい止まってられるか知りませんが、   向こうだって、握手した人全員を覚えていられるわけ……   ああっ! ! !! 」 「 ふふふっ……気づいたか? 察しがイイじゃないか。   そう、君が右手を差し出せば、向こうは嫌でも気づくはず。   そのド派手な傷に! 」 そう言って、大槻は背後のダンボール箱の 中に入っている大量のCDシングルの中の一枚を取り出した。
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