4人が本棚に入れています
本棚に追加
(……ん?ここはどこだ?)
目を覚ますと、自分が元いた場所とは違う所にいることに気付いた。辺りを見回すと、そこは何も無い真っ白な部屋だった。
ここはあの世か?白いから天国なのか?など考えてると目の前に2つの電子画面が現れた。
「なんだこれは?」
思い切って触ってみるも透けていて、通り抜けてしまう。しばらくするとその画面に文字が浮かび上がった。
左の画面には、【6年前に戻る】と書かれてあり、右の画面には、【現世に戻る】と書かれてある。2つの画面の間にはデジタル時計の様なものが浮かんでおり、30と書かれたまま進んでいない。
【ソレデハ選択ヲオ願イシマス】
どこから聞こえてきたのか分からないアナウンスと共に、時間は減り始めた。どうやら残り30秒の間にどちらかの選択肢を選ばなければいけないらしい。
頭の中は混乱している。だが、どこか冷静な自分がいて、迫られた選択を受け入れようとしていた。
(6年前ってことは、母さんを救えるのか?)
なんとなく、直感だが6年前を選ぶと悔やんでも悔やみきれないあの日に戻れる気がする。現実味のない話だが、今のこの状況自体現実味がない。
迷うことなんてない。あの日に戻れるなら戻りたい。そう願ったのは自分じゃないか。残り時間は10秒を切ろうとしていた。左の画面に手を伸ばそうとした時、画面の左下に小さく赤文字が書かれてることに気付いた。
※この選択肢を選ぶとあなたの五感の内の一つが失われることになります
手を止めた。五感?視覚とか聴覚とか?過去に戻る代償は大きいってことか?右の画面を見てみると、
※この選択肢を選ぶと1億円を持った状態で戻れます
と書かれてあった。
なんとなく分かってきた。自分が望んだ方の願いを叶えようとすると、大きな代償がいるが、望まない方の現実に戻ろうとすると、その現状よりプラスの状態で戻れると…。
これは難しい選択だろう。普通の人ならば…。
俺は左の画面に触れた。
迷うことなんてない。五感を失おうと、莫大な資金を得ようと関係ない。大事な人を失った過去の過ちを何度後悔しただろうか。
「母さん……」
目の前が光に包まれ、俺の意識が途絶えた。
最初のコメントを投稿しよう!