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息を切らしながら広間に着くと、すでに他の兄弟が揃っている。
「遅いぞ、レナ! 気が抜けているのか!?」
いきなりきつく言い放ったのは、身だしなみの整った几帳面な次男、ジキル。
「まあ落ち着け。レナも間に合ったじゃないか」
すぐにレナをかばう長男のエン。十年たった今でも、女性と見間違える容姿は健在だ。
「はははっ……エンの兄貴は優し過ぎるんだよな。ジキルの兄貴は厳し過ぎる気がするけどね」
お調子者という言葉が似合う、やんちゃな三男のサンドが口を挟む。
「まったく……こんな所で騒がないでよ。品が無い」
控え目な服装のレナとは違い、派手なドレスに身を包み、色鮮やかな装飾品を幾つも着けているのは長女のチョウキ。
「申し訳ございません。ちょっと支度に手間取ってしまって……」
バツが悪そうに笑うレナ。チョウキとジキルはため息が零れる。
重い空気が苦手なサンドは、雰囲気を変えようと割って入った。
「しかし、全員揃うなんて久しぶりだな。今日は皆を集めてなにするんだろう? 親父は病気になって歩くのも辛そうだから、エンの兄貴に王位を譲るって話かもね」
「失礼だぞ、サンド! それに国王様と呼べ!」
「はいはい……申し訳ございませんねえ、ジキルお・に・い・さ・ま! あーあ。俺がもう少し早く産まれていたら国王になれたのにな。そう言えば、エンの兄貴は国王になりたくないって言ってたよな? 変わってやろうか?」
「サンド!!!」
頭に血が上ったジキルの声が響き渡る。
「落ち着けジキル。それから、サンドも悪ふざけが過ぎるぞ」
エンがジキルとサンドの仲裁に入るが、そこにチョウキが口を挟んだ。
「私も聞いた事があるわ。国王の座は、私が変わってあげてもよろしくてよ」
「チョウキ姉さんまで……」
落ち着きなく睨み合っていると、国王の間の扉が開いた。
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