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ループ4の壱
キン曰く―オレが今繰り返している『今日』はどうやら、全く同じことを
ただ繰り返す、ということではないようだ。
毎回天気が変わったり、季節が変わったり―って、それはもうループではない
ような気が・・・・・
『流石に同じだと飽きるから』
というのがキンの主張だった。うーん、一理ある。
そしてもう一つ違うことが・・・・・・・・ピンポーン♪―あ、誰か来た。
「ハーイ」
母親の声が下から聞こえて来た。
「あのっ、サトシくんいますか?」
と、スモークのかかったような声が聞こえて来る。やっぱり、小鳥遊だ。
階段を上がって来る足音がして、トントントンと、ドアを軽くノックした。
「どぉぞー」
「失礼します」
そう挨拶すると、“彼女”はオレの部屋に入って来た。肩まで伸びたセミロングの麻色の髪を後ろで括っていて、制服という、その素朴な恰好で際立った
可愛らしい顔立ち、大きな茶色い瞳。
「ああ、いらっしゃい小鳥遊さん」
オレは彼女に向かってベッドにあぐらをかきながら会釈した。
彼女の名前は小鳥遊こころ、オレの近所に住んでいる女の子で、昔から親ぐるみで交流がある。
「今日はどしたん?」
「あ、うん、クッキー焼いて来たから・・・・良かったらと思って」
オドオドと身体の前に持った鞄を揺らしながらも、クリアな声で小鳥遊は言った。そして・・・・・・オレの膝元を一瞥した。
それはどうしてか?―ウチのドラゴンっ娘がオレの膝を枕にして寝ているから。
もちろんオレにそんな癖はない―コイツがオレに勝手に強要してきたからだ。
『膝枕しないと溶けてしまう』って、訳わからんこと言って・・・・・
「キン、ちゃん・・・・・・? こんにちは」
「こんにちは」
キンがぶすっと頬を膨らませて挨拶する。
「あらぁ、ひざまく、ら?」
小鳥遊が微笑して言うと、
「悪いか?」
と返すキン。なんでそんな『コイツハオレノエモノダカラチカヨンナ』って
敵意むき出しにする肉食獣―こいつはドラゴンだが―みたいに小鳥遊を睨む?
というか、重くなるからそんな強く抱きしめてくんなキン。
「ううん、可愛いよ、キンちゃん」
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