完熟トマトと黒縁眼鏡

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携帯から顔を上げると、ちょうど陽平くんが店に入ってきたところだった。 レジで注文しながら、挙動不審になってる陽平くん。 コーヒーショップのメニューは、呪文のようで苦手なんだって。 じゃあ、普通にコーヒー頼めばいいじゃないって云ったら、サイズがまた問題らしい。 年寄りか、とかつっこみたくなるけど、その辺が陽平くんらしいとこだから黙っとく。 ちゃりんちゃりんと音がしたかと思ったら、そこらにばらまいた小銭を周囲にあやまりながら陽平くんは拾っていた。 あーあ。 遠目でも、すでに赤くなってるのがわかる。 そんなこんなでどうにか会計をすませ、コーヒーを受け取ると店内をきょろきょろ。 なかなか私を見つけられないらしい。 見つけるまで観察してるつもりだったけど、あまりに見つけられなくてかわいそうになってきたので、ちょっと手を挙げてあげたら、やっとわかったみたいでぱっと顔が輝いた。 うーん、いますぐにでもぎゅーっと抱きしめて、あたま、いい子いい子って撫でたげたい。
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