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こっちに向かってきながら、椅子に躓いてはあやまり、人にぶつかってはあやまり。
やっと私のところにたどり着いたときには、完熟トマトの出来上がり。
「ご、ごめんね。遅くなって」
「ううん。別に」
にっこりと笑いかけると、陽平くんは黙ったまま突っ立ってる。
「座ったら?」
「あっ、うん」
テーブルの上にカップを置くと、完熟トマトな陽平くんは慌てて座った。
「教授の用事、終わったの?」
「うん」
まだ顔が赤いまま、陽平くんが頷く。
そのまま、カーディガンの袖で半ばまで隠れた両手で、そっと黒縁ボストン眼鏡を支えるように押し上げた。
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