2話

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 ディルは長身ではなかった。日に焼けた肌は健康そうで、服装は身軽だった。荷物も紐がついた袋が一つ。長剣を腰に携えている。長旅には見えなかった。だからだろうか、クレシダとディルが前で話すのに対し、ブラムはアヴァに囁いてくる。 「アヴァ、あのディルって男、怪しくないか?」 「怪しいの? わたしには普通の旅人に見えるけど」 「こんな民家もなにもない場所で、あんな少ない荷物で、旅人なんてやってられないさ」 「そうかしら? お兄様、きっと考え過ぎよ。確かに、村では酷い目にはあったけど、信じないと」  アヴァの脳裏をオッドの憎しみの顔が過ぎる。もう、なにも考えたくないと彼女は思った。歩くことに集中して、忘れてしまいたいと。だから、ブラムとの会話も辞めたかった。 「お兄様、話していたら疲れてしまうから、静かにしていましょう? 大丈夫よ、お母様がいるもの」  ブラムは考え込むように俯きながら黙っていたが、やがて溜め息を一つ吐いて「そうだな」と頷いた。ブラム自身も、あまり深く考える余裕はなかった。  陽が落ちて暫くした頃、見晴らしのいい野宿をすることになった。 「アヴァ、ブラム、今夜はここで休みましょう。2人は先に眠っていてね」 「母さんも休みなよ。俺とディルさんで見張りするからさ」 「大人の方が体力はあるのよ。それに、2人が寝てくれないと私も安心して寝られないわ」  ブラムは渋々といった様子だったが、2人はその言葉に従って眠りに就いた。母を心配する気持ちはあっても、回復しきらない疲労が彼女らをそうさせたのだろう。アヴァはウトウトと落ち掛ける意識の中で、その場を離れるクレシダとディルの姿を見た。
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