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「オッド! 早く来てよ!」
「待ってよアヴァ」
金髪の少女のあとを、癖っ毛の強い少年が追いかけていた。2人は小鳥が囀る木々の間を器用に駆け抜ける。澄んだ川を飛び越え、彼女らが辿り着いたのは色とりどりの花が咲く広原だった。
「僕らはいつもここに来ているね」
「でも、わたしはこの景色も、空も好きよ。大人になっても、この景色がずっと続いたらいいな」
草原に寝転んだアヴァの蒼い双眸には、コバルトブルーの空が映り、蒼と青が混ざり合い不思議な色味を魅せていた。
「僕も、アヴァがいるなら、こんな場所でもつまらなくないよ」
上からその瞳を覗き込むように、オッドはアヴァを見下ろした。空は隠され、アヴァの瞳にはオッドの笑顔が映る。
「ありがとう、オッド。わたしも、オッドがいるから嬉しいわ。兄様は剣術の特訓をしていて、相手をしてくれないんだもの」
アヴァは父母と兄を持つ4人家族だった。アヴァは10歳、兄とは2歳差だ。
「まあ、村の人が少ないし、どこかでセンソウが始まるって聞いたよ。センソウには、たくさんの男が必要なんだってさ」
「オッドは剣術の練習をしなくていいの?」
「お前にはまだ早いって、父さんに言われたよ。僕も強くなりたいんだけどな」
「どうして強くなりたいの?」
オッドはモジモジとした様子で、顔を赤らめながら呟いた。
「アヴァを、守るため」
「あ、ありがとう!」
アヴァはなんだか恥ずかしくなって、声を上ずらせた。彼女はまだ恋をしたことはなく、オッドのことが好きなのかはまだわかっていなかった。
「そうだ! 今日はオッドのために、お花の指輪を作ってあげる! オッドも作ってね?」
「やっぱり、アヴァって女の子って感じだよね。お花遊びって、ケッコウ恥ずかしいんだけどなあ」
「じゃあ、作りたくない?」
「ううん、作るよ。女の子らしいから、守りたいんだ」
一度言ってしまったせいか、オッドは自分の意思を口に出すことが少し恥ずかしくなくなったようだ。
アヴァは色を被らせず、複数の花を使ったカラフルな指輪を作った。
「オッド、完成した?」
「一応ね」
アヴァが指輪を見せると、オッドも指輪を見せる。オッドの差し出した指輪は、コスモスのような花を基調にした桃色のものだった。
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