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アヴァ達がここに連れてこられて、長い時間が経過した。誰も計測していないため、アヴァもどれぐらいの月日、あるいは年月を過ごしたのかはわかっていなかった。
あの日、エフィーと別れてからは彼女に二度と会うことはなく、孤独の日々を過ごしていたが、代わりにネズミが彼女の寂しさを紛らわせていた。
アヴァがフィンと名付けたその友達は、夜毎に彼女と一緒に食事をしては、お礼を言うように一鳴きして去っていったり、アヴァがなにかを話したいときは、その場にいて聞いてくれた。
その友達が、今は眼下で苦しんでいる。昨夜までは元気に走り回っていたのに、今夜はアヴァが来るよりも早くこの部屋にいて、腹を横にして倒れ込み震えも窺える。当然、アヴァには知識がなく、生まれて初めて感じるもどかしさで、意味もなく首を左右に振るしかなかった。
「アヴァ、なのか?」
そんなアヴァの耳に、懐かしい声が聞こえた。覚えているものよりは低くなっていたが、紛れもなかった。
「おにい、さま?」
振り返ると、一回り大きくなった兄の姿があった。腰に剣を帯び、軽鎧を身につけている。アヴァが一目見てブラムとわかる面影は残していたが、表情は怖く感じた。
「やっぱりアヴァなんだな。良かった、無事だったか」
「お兄様も無事だったのね、良かった……。そうだ! お兄様、ネズミが苦しんでいるみたいなの。どうにか助けられないかしら?」
「ネズミ? そんなの、放っておけばいい。それよりも、伝えなきゃいけないことがある」
「だめ、わたしの大切な友達なの! こっちが先よ」
「友達か。……わかった。見せてくれ」
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