1話

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「私は行かなければいけない。ブラムが帰ってきて、もし私の元へ来ようとしたそのときは、必ず止めてくれ」 「ええ、わかったわ。絶対に死なないでね、あなた。もしものときはーー」 「心配することはない。盗賊が数人程度だろう。では、行ってくる」  アヴァは、漆黒を纏った父を見送った。闇に紛れて消えてしまいそうな姿に、不吉さを感じながらも。 「母さん! なにがあったの!?」  それから間も無く、出て行くときよりも些か汚れた姿のブラムが現れた。ゼイゼイと大きな呼吸をしているところからも、全速力で帰ってきたことが推測できる。 「敵が来たのよ。あなたは家でおとなしくしていなさい」 「なに言ってんだよ! 俺は皆を守るために鍛えてきたんだろ? 俺も行く!」 「ブラム!」  クレシダは呼び止めようとするが、ブラムは走って行ってしまった。それを、アヴァも追う。 「アヴァ?」 「わたし、お兄様を止めに行くわ!」 「待ちなさい!」  ブラムを追ったアヴァ。そして、アヴァを追うクレシダ。彼女ら家族は、全員が戦場へと向かって行く。煌々と成長し続ける、村を食い尽くすような炎が遠くに見えていた。
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