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「私は行かなければいけない。ブラムが帰ってきて、もし私の元へ来ようとしたそのときは、必ず止めてくれ」
「ええ、わかったわ。絶対に死なないでね、あなた。もしものときはーー」
「心配することはない。盗賊が数人程度だろう。では、行ってくる」
アヴァは、漆黒を纏った父を見送った。闇に紛れて消えてしまいそうな姿に、不吉さを感じながらも。
「母さん! なにがあったの!?」
それから間も無く、出て行くときよりも些か汚れた姿のブラムが現れた。ゼイゼイと大きな呼吸をしているところからも、全速力で帰ってきたことが推測できる。
「敵が来たのよ。あなたは家でおとなしくしていなさい」
「なに言ってんだよ! 俺は皆を守るために鍛えてきたんだろ? 俺も行く!」
「ブラム!」
クレシダは呼び止めようとするが、ブラムは走って行ってしまった。それを、アヴァも追う。
「アヴァ?」
「わたし、お兄様を止めに行くわ!」
「待ちなさい!」
ブラムを追ったアヴァ。そして、アヴァを追うクレシダ。彼女ら家族は、全員が戦場へと向かって行く。煌々と成長し続ける、村を食い尽くすような炎が遠くに見えていた。
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