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「もしもし?」
私はスマホを耳に当てながら片手でキーボードを操作し続けた。
『芹香? まだ仕事?』
電話は彼氏の本田智(ホンダサトシ)だった。
「うん。そうだけど」
『そっかあ。夕飯、一緒に食べようと思ったんだけど、それなら俺も卓也とでも食べよっかな』
卓也というのは智の口からよく聞く友人の名前だ。
私も会ったのはほんの数える程度で、最近は何ケ月も顔を見ていない。
「ねえ、いつも卓也さんにおごってもらってたりしないよね?」
『そんなことねーよ。割り勘』
「智、お金あるの?」
『ん、まあ、飯食うくらい何とかなるし』
「……そ。今度卓也さんも食事に誘ってよ。そんなこと言っててどうせおごってもらってるんでしょ? 少しはお礼しなきゃ」
『いいよ。あいつも忙しいし。じゃあな』
電話は忙しなく切られた。
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