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「高い」
碧斗は率直に言った。
「でしょうね……」
「飲んだことねーけど甘いのは得意じゃねーし。やるよ」
「せっかくいただいたのに……それに、次にお会いした時、ワインの感想、聞かれるんじゃありません? 社長だっていただいたワインのこと、話題にできた方がいいと思いますよ?」
秘書としての意見だが、こんなことは碧斗だってわかっているはずだ。
「まあなあ」
碧斗は窓の外を見ていたが、振り返ってワインの袋を見つめた。
「適当に美味しかった、なんて言えないでしょう?」
碧斗は嘘が嫌いだ。
だから、飲んでもいないワインを「美味しい」とも言えない性分だ。
こういうところは真面目というか、嘘がつけない男なのだ。
「やっぱり、これは社長が」
私はワインをデスクの中央に移動させた。
「だったらよ、お前も飲まなきゃ意味がねーよ」
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