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小野田さんには年齢を知られたくなかった。
おそらく、彼は碧斗と同じくらいの年齢だ。
彼が碧斗と同い年でも、私は二歳年上。
今まで年上である事実を隠しながら振る舞っていたつもりだが、彼に年齢を知られては、これからはそうもいかなくなる。
小野田さんは穏やかで物腰も柔らかいせいか、碧斗とは違った大人の雰囲気がある。
何もかも包み込んでくれそうなあの笑顔に癒されたいと思うことは決して悪いことではないはずだ。
けれど、もうそれもできなくなる。
普段は反り返るほどまっすぐに伸ばしている背中をわずかに丸めながらため息をつくと、小野田さんが言った。
「……三十路? それならなおさら彼女の意見が聞きたいね。ちょうど、ブライダルパーティー用に考えたデザートなんだ」
そして、彼は顔を上げた私に微笑んだ。
「そろそろ結婚を意識する年齢かもしれないしね」
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